大判例

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東京地方裁判所 平成7年(ワ)19593号 判決 1999年7月19日

原告

創価学会

右代表者代表役員

森田一哉

右訴訟代理人弁護士

石井春水

小谷野三郎

中村巌

渡辺昭

鳥越溥

福島啓充

若旅一夫

井田吉則

海野秀樹

松村光晃

山下幸夫

被告

株式会社講談社

右代表者代表取締役

野間佐和子

被告

元木昌彦

被告株式会社講談社及び被告元木昌彦訴訟代理人弁護士

河上和雄

的場徹

被告株式会社講談社及び被告元木昌彦訴訟復代理人弁護士

佐藤高章

被告

甲野太郎

被告

甲野春子

被告甲野太郎及び被告甲野春子訴訟代理人弁護士

中田康一

飯田正剛

神田安積

被告甲野太郎及び被告甲野春子訴訟復代理人弁護士

中村嘉宏

主文

一  被告株式会社講談社及び被告元木昌彦は、原告に対し、別紙四記載の謝罪広告を、被告株式会社講談社発行の週刊現代に、別紙四記載の条件にて、一回掲載せよ。

二  被告株式会社講談社及び被告元木昌彦は、原告に対し、各自二〇〇万円及びこれに対する平成七年九月一一日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告の被告甲野太郎及び被告甲野春子に対する各請求及び被告株式会社講談社及び被告元木昌彦に対するその余の各請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用のうち、原告と被告株式会社講談社及び被告元木昌彦との間に生じたものはこれを一〇〇分し、その一を被告株式会社講談社及び被告元木昌彦の、その余を原告の各負担とし、原告と被告甲野太郎及び被告甲野春子との間に生じたものは原告の負担とする。

五  この判決は二項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

一  被告株式会社講談社及び被告元木昌彦は、原告に対し、別紙一記載の謝罪広告を、株式会社朝日新聞社発行の朝日新聞、株式会社読売新聞社発行の読売新聞、株式会社毎日新聞社発行の毎日新聞、株式会社日本経済新聞社発行の日本経済新聞及び株式会社産業経済新聞社発行の産経新聞の各朝刊全国版社会面、原告発行の聖教新聞全国版並びに被告株式会社講談社発行の週刊現代に、別紙一記載の条件にて、各一回掲載せよ。

二  被告甲野太郎及び被告甲野春子は、原告に対し、別紙二記載の謝罪広告を、株式会社朝日新聞社発行の朝日新聞、株式会社読売新聞社発行の読売新聞、株式会社毎日新聞社発行の毎日新聞、株式会社日本経済新聞社発行の日本経済新聞及び株式会社産業経済新聞社発行の産経新聞の各朝刊全国版社会面、原告発行の聖教新聞全国版並びに被告株式会社講談社発行の週刊現代に、別紙二記載の条件にて、各一回掲載せよ。

三  被告らは、原告に対し、各自一億円及びこれに対する平成七年九月一一日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件訴訟は、宗教法人である原告が、主に被告甲野春子及び被告甲野太郎(以下被告甲野春子を「被告春子」、被告甲野太郎を「被告太郎」、両者を併せて「被告甲野ら」という。)の発言を引用する形で構成された「週刊現代」平成七年九月二三日号(以下「本誌」という。)の「東村山女性市議『変死』の謎に迫る/夫と娘が激白!『花子は創価学会に殺された』」との見出しの下に掲載された記事(以下本誌一八〇ないし一八二頁の記事を「本件記事」という。)の記載により、原告の名誉が毀損されたとして、本誌を発行する被告株式会社講談社(以下「被告講談社」という。)及び本誌の編集長である被告元木昌彦(以下被告元木昌彦を「被告元木」、被告講談社と被告元木を併せて「被告講談社ら」という。)並びに本件記事に引用された各発言を被告講談社の取材に対して行った被告甲野らをそれぞれ被告として、不法行為に基づく謝罪広告の掲載並びに損害賠償及び遅延損害金(不法行為の日から支払済みに至るまで)の支払を請求(被告太郎、被告春子及び被告元木に対しては民法七〇九条に基づく請求、被告講談社に対しては七一五条に基づく請求)した事案である。

一  争いのない事実等(証拠及び弁論の全趣旨から容易に認められる前提事実をも含む。)

1  当事者

(一) 原告

原告は、日蓮大聖人御建立の本門戒壇の大御本尊を本尊とし、日蓮正宗の教義に基づき、教義を広め、儀式行事を行うこと等を目的とする宗教法人である(弁論の全趣旨)。

(二) 被告ら

被告講談社は、雑誌及び書籍の出版等を目的とする株式会社である。

被告元木は、被告講談社の発行する週刊誌「週刊現代」の編集人兼発行人(編集長)であり、被告講談社の従業員として右週刊誌の編集に従事している者である。

被告太郎は、死亡時東村山市議会議員であった亡甲野花子(以下「甲野市議」という。)の夫であり、被告春子は、甲野市議の長女である。

2  本件記事の記載等

(一) 被告講談社は、平成七年九月一一日、同社発行の「週刊現代」平成七年九月二三日号(甲一、本誌)を発行し、その一八〇頁から一八二頁において、「東村山女性市議『変死』の謎に迫る/夫と娘が激白!『花子は創価学会に殺された』」(以下「本件大見出し」という。)及び「オウムのような犯行の手口」(以下「本件小見出し」という。)との見出し(以下両者を併せて「本件見出し」という。)の下に、次のような記載を含む別紙三記載のとおりの本件記事を掲載した。

(二) 本件記事には、被告春子が、「まるで坂本弁護士の事件みたいだと思った。絶対に自殺などではありません。」「母が死んだという一報がきたとき、すぐに、母は殺されたんだと思いました。2年くらい前から尾行されたり、いたずら電話が続いたり、私のポケベルに4(死)の数字が並んだり、さらには放火などのいやがらせが続いたので、夜一人で出歩かないようにするなど警戒していたんです。母のような人を自殺に追い込むことはできないと思います。」「創価学会はオウムと同じ。まず汚名を着せてレッテルを貼り、社会的評価を落とす。そして、その人物が精神的に追い込まれて自殺したようにみせて殺すのです。今回で学会のやり方がよくわかりました。母は生前、『私ぐらいの市民グループレベルの人間だと殺りやすいわよね』といっていました」と発言した旨の記載(以下「本件春子発言部分」という。)がある。

(三) 本件記事には、被告太郎が、「妻が自殺するはずがありません。創価学会に殺されたんですよ。事件後、私と妻が離婚していたとか、妻が死ぬ前、青白い顔で歩いていたとか、事実でない噂が流れましたが、これも学会の仕業だと思います。妻が万引き事件で逮捕されたことも、学会におとしいれられただけ。万引き事件で悩み、それが原因で自殺したというシナリオを作ったんです。だとすれば、まるでオウムのような犯罪じゃないですか」「妻が自殺するはずがありません。この事件は創価学会と警察によってデッチあげられたとしか思えない」と発言した旨の記載(以下「本件太郎発言部分」という。)がある。

(四) 本件記事には、本件春子発言部分に関して、「もちろん、創価学会が甲野さんを殺したという証拠は何ひとつない。しかし、甲野さんの活動は創価学会にとってはかなり脅威だったようだ。」との記載があり、本件太郎発言部分に関して、「甲野さんの夫・太郎氏が『妻が自殺するはずがありません。この事件は創価学会と警察によってデッチあげられたとした思えない』と憤るのも無理はない。」との記載がある。

(本件春子発言部分及び本件太郎発言部分を併せて「本件発言部分」といい、本件見出し及び右(二)ないし(四)の記載をまとめて、以下「本件問題部分」という。)

二  争点

1  被告講談社らの原告に対する名誉毀損の成否

(原告の主張)

(一) 本件問題部分は、あたかも原告が甲野市議を殺害したかのような印象を本件記事の一般読者に与えるものである。

しかしながら、甲野市議の死亡と原告とは何の関係もない。

すなわち、本件問題部分は、虚偽の事実を摘示するものであって、これにより原告の社会的評価は著しく低下した。

そして、被告元木は、本件問題部分の記載が原告の社会的評価を低下させることを認識しながら、本件記事を本件雑誌に編集・掲載したものである。

(二) 被告の主張に対する反論

そもそも、甲野市議のグループと原告との間の抗争など存在しておらず、甲野市議の死亡については、被告甲野らによって、原告によって殺害されたとの一方的な宣伝がなされたに過ぎない。

したがって、本件記事について被告講談社らが主張する紛争報道なるものを論じる余地はなく、被告講談社らは、甲野市議の死亡につき被告甲野らの立場に立ってその発言を一方的に引用した上、これを前提とする記事を報道したものである。

本件記事の中立性についても、本件記事はその構成や記述内容からしても、原告が甲野市議を殺害したという印象を読者に強く与えるものであり、すなわち被告甲野らの主張に全面的に同調する論調で書かれているものであって、およそ中立的な報道とはいえないものである。

また、従前の裁判例においても、他者のコメントを引用、掲載することによって名誉毀損の不法行為が成立することは当然の前提とされており、第三者の談話の紹介の形式であっても、それを紹介した者が名誉毀損による不法行為責任を負うことは我が国の確立した判例であることもまた明白である。

(被告講談社らの主張)

(一) 本件記事がいわゆる紛争報道であること(本件記事の中立性)

(1) 本件記事は、甲野市議の死亡を「変死」と疑う見解が存在している事実、すなわち故人の娘と夫とが故人の死亡に原告関与の疑惑を指摘した事実をそのまま伝えたものである。

したがって、本件記事は、右のとおり意見、見解が社会的に存在している事実を読者に紹介したものに過ぎず、それ以上に甲野市議の死亡を「変死」と決めつけたり、甲野市議が原告に殺されたという事実を読者に伝えるものではない。

大見出しにおける「花子は創価学会に殺された」という言葉はカッコでくくられており、その上部に記された「娘と夫が激白!」という記述や、本文リード部分の「遺族たちは悲痛な叫び声をあげるのだが…」という記述によって、本件記事を読む読者、更には本件記事の広告を読んだ一般の公衆において、この見出しは遺族である夫と娘の発言内容を引用したものであることを一見して明白なものとしており、本件記事が甲野市議の残された遺族の声を読者に紹介するものであることを明らかにしているものである。

(2) 一般に、社会に存在する紛争、内紛、告発、訴訟の存在と実情を公衆に伝達する場合、その紛争、抗争を構成する両当事者の主張内容を引用、紹介することは必要不可欠なことである。

そして多くの場合、紛争、抗争は、そもそも責める側すなわち告発者の主張や言い分をまず紹介して、そのアウトラインや争点、紛争の実情を明らかにし、これに対する反対当事者の反論をリポートする形で報道される。

このことは、日常多く目する提訴報道を典型とするものであり、報道機関は、訴状の内容や原告の記者会見に現れた原告の言い分(請求の趣旨、請求の事情)をまず報道して訴訟の争点をレポートし、末尾に被告とされた者の反論を掲載することにより提訴という社会的事実を報道するのである。

そして、これら紛争、訴訟、抗争の報道に当たっては、当事者の言い分には相手方の社会的評価に触れる部分が必ず存在するものであるが、そのような部分をそのまま公衆に伝えたとしても、報道機関において反対当事者に対する名誉毀損の責を負うものではない。

なぜなら、このような紛争報道は、論争的事実につき公衆が自ら選択的判断を下すことを制度理念としている民主主義社会においては必要欠くべからざるものだからである。

(3) ところで、本件記事の掲載は、甲野市議の活動を巡る同市議のグループと原告との抗争を背景にして、同市議の急死を契機として、同市議の遺族を中心としたグループと原告との間でこの死亡の原因について論争が発生しており、この死亡に原告関与の疑惑を指摘する遺族側の見解を巡って紛争が拡大しているという社会的事実を読者に紹介するものであった。

そして、本件記事の構成及び記述内容は、告発者の言い分の公正中立的な引用を超えるものではなく、まして告発者の言い分紹介に名を借りて自らその旨の事実を伝達するものでもない(また、本件記事をみれば、そのように読まれる懸念もない。)。

すなわち、本件報道は甲野市議の死因を巡る紛争という社会的事実を読者に伝えるに当たり、この紛争を構成する構成要素として告発者側である遺族の見解を公正中立に紹介したに過ぎないものであって、紛争報道の域を出るものではなく、これを伝達した報道は不法行為を構成するものではない。

(二) 本件報道対象事実の公益性と社会的重要性

ところで、本件報道において報道の対象事実となっている甲野市議の死亡を巡る論争の存在は、社会的に有用な情報であって、報道する意義が認められる公共的関心事というべきものである。

甲野市議は東京都東村山市において、「東村山市民新聞」の発行に協力し、市民運動「草の根」を進める中から市議会議員に当選し、同市において優越的な勢力となるに至った原告とその政治組織である公明党に対し、その業者癒着への批判等を通じてこれを批判し対抗する活動を繰り広げてきた。

甲野市議は平成七年四月の統一地方選挙でトップ当選で再選されたが、同年七月同市議に対し、万引き事件疑惑が発生することなどを通じて、同市議は原告との緊張関係を強め、同市議は原告の政治的社会的活動に対する反対運動を象徴する人格として社会的に注目を集めた。

人を集め、金を集め、政治的影響力をも行使する宗教団体の活動運営の実情は現代社会における公共的関心事と認められるものであるところ、甲野市議の活動を巡る同市議と原告の抗争、論争の実情はまさしく報道に値する社会に有用な情報、公共的関心事というべきものであった。

この論争は、同市議の死亡を通じて、今度は同市議の死因を巡る同市議と共に活動してきた「草の根」グループと原告の対立論争に承継され、更には、同グループによる原告の解散請求並びに甲野市議の遺志を継いだ被告春子の国政への出馬表明というように社会的事件として広がっている。このように社会的に位置を持った論争になっている甲野市議の死亡原因を巡る遺族と原告との論争は、社会的に報道意義が認められる事項に他ならず、この論争を紹介する上で、告発者である遺族の発言を引用し紹介することは必要なことといわざるを得ない。

(三) 本件記事の掲載には実質的違法性がないこと

表現行為に伴いある人物の社会的評価が低下したとしても、評価の低下の全てが法的救済の対象となるのではなく、当該表現行為が実際に当該人物の社会的評価を実体的に形成したときに初めて、当該表現行為の名誉毀損という不法行為類型が予定する実質的違法性が認められる。

本件においては、確かに「殺す」という言葉の重さを考えるならばその内容は衝撃的ではあるが、本件発言部分の記載は、そこから本誌の一般読者が原告が甲野市議を殺したと考えるとは到底思えないものであるし、また、本誌の一般読者は右被告甲野らの発言を最愛のものを失った直後の近親者、遺族の声として受け止めるものと思われること、更に、被告甲野らが原告に対して敵対的な言論を行う者であることが既に一般読者において明らかであったことに照らせば、本件記事における本件発言部分の記載は、原告の社会的評価を形成せず、原告の名誉を毀損するものではない。

2  被告甲野らの原告に対する名誉毀損の成否

(原告の主張)

被告春子は、平成七年九月上旬ころ、被告講談社の取材に対し、自らの発言を本誌上に掲載させることを企図して、本件春子発言部分の発言をし、右発言は本誌に掲載された。

被告太郎は、平成七年九月上旬ころ、被告講談社の取材に対し、自らの発言を本誌上に掲載させることを企図して、本件太郎発言部分の発言をし、右発言は本誌に掲載された。

本件発言部分は、あたかも原告が甲野市議を殺害したかのような印象を本件記事の一般読者に与えるものである。

すなわち、被告甲野らは、被告講談社の取材に対して、原告の社会的評価を低下させることを認識しつつ右各発言をなし、よって、本件発言部分を本誌に掲載させて、原告の名誉を毀損したものである。

(被告甲野らの主張)

被告甲野らは、被告講談社の単独取材を受けたことはなく、被告講談社の取材に対して、本件発言部分のような発言をしたことはない。

3  原告の損害等

(原告の主張)

(一) 被告講談社は、平成七年九月一一日ころ、本誌約八三万部を日本全国に販売、頒布した。

本件大見出しは、同日ころから、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞の各朝刊全国版広告欄や、全国主要都市における電車の中吊り広告にも掲載された。

(二) 本誌発売後、原告の本部や東村山市内にある原告の東村山文化会館等に対し、数十回にわたる無言電話や「人殺し!」などという強迫電話が頻繁にかかってくるようになり、原告の会員が「甲野は裏で学会が殺したんだろう」「創価学会はオウムと同じ」などと知人から言われていやな思いをしたという会員からの声が数多く寄せられたりしている。

また、原告の機関誌である聖教新聞の購読をめぐるトラブルが発生したり、原告の主催する会合において、原告の幹部が、一々、創価学会は甲野市議の死亡と全く関係ない旨を釈明しなければならなくなる等の様々な実害が発生している。

(三) 被告らの名誉毀損行為によって、原告が被った損害は一億円を下らない。更に、右名誉毀損行為によって、原告の社会的評価は金銭賠償のみによっては回復できない程著しく低下したものであり、請求の趣旨どおりの謝罪広告が認容されなければ、原告の名誉を回復することはできない。

第三  当裁判所の判断

一  事実認定

前記争いのない事実等に加えて、証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる(証拠は事実毎に掲記する)。

1  生前の甲野市議の活動等(丙四三、弁論の全趣旨)

甲野市議は、昭和六二年に、東村山市議会議員に初当選し、以降三期連続で当選(平成七年四月の東村山市議会議員選挙では二期連続のトップ当選)を果たしており、平成七年九月の死亡時においても同市議会の現職議員であった。

甲野市議は、どこの政党にも所属せずに政治活動を続けていたが、原告や公明党が国政又は地方政治に悪い影響を与えることがあれば政教分離の原則からそれを排除すべきであると考えており、死亡する数年前から、原告創価学会子弟に対する東村山市職員の優先採用の疑惑や原告創価学会系企業に対する公共事業の優先発注の疑惑等の存在を指摘して東村山市議会本会議等で取り上げたりする等、原告や公明党を批判する活動を行っていた。

また、原告を批判する内容を記載したミニコミ紙「東村山市民新聞」を作成して新聞折込で配布したり、原告から脱会した者等から原告による人権侵害を受けた等との相談や救済を求められた場合には、同僚の矢野穂積東村山市議会議員(以下「矢野市議」という。)と共にそれらの者を支援したりする活動を行っていた。

なお、当時、東村山市議会では定数二七名の内、公明党が六名の議席を有していた。

甲野市議及び矢野市議は、普段から東村山駅の近くにある東村山市本町<番地略>所在の「草の根共同事務所」(以下「草の根事務所」という。)において、議員活動の執務を行っていた。

2  平成七年九月一日ころの甲野市議の動静及び同市議の死亡(丙一ないし一四、三八、四三、五〇、五一、弁論の全趣旨)

(一) 甲野市議は、平成七年九月三日に高知で行われる反創価学会の市民グループのシンポジウムに参加するため、同月二日に、被告春子と共に飛行機で東京を発つ予定であった。

なお、甲野市議は、右の飛行機の予約や高知での宿泊先の予約を仮名で行っていた。

同月一日の午前中に被告春子が東村山市の甲野市議の自宅に電話をかけたところ、甲野市議は、被告春子に対して、正午までに市議会に宗教法人法改正を求める陳情を出しに行った後、その足で午後には都議会にも同じ内容の陳情を出すため都庁にも出かけて、その後弁護士と打ち合わせをした後東村山市に戻ってから高知での講演の原稿を準備するので、帰宅は夜遅くなる旨述べた。そして、更に、「高知でゆっくりして、月曜に帰る予定になっていたけれど、九月議会が目前で質問通告の期限があるので日曜日には帰らないといけないかもしれない。でも、孫たちには、何かおみやげを見つけて買ってきてあげたいよね。」等と述べた。

同日の午後一〇時前に被告春子が草の根事務所に電話したところ、電話に出た矢野市議は、被告春子に対して、「さっき、お母さんから、『ちょっと気分が悪いので、休んでから来る。』という電話があったので、お母さんはたぶん自宅にいると思う。」と話した。

その直後、被告春子は、甲野市議の自宅に電話を入れたが、誰も電話に出なかった。

それから、被告春子は甲野市議の自宅に向かい午後一〇時二五分過ぎに到着したが、そこに甲野市議の姿はなかった。

その後、被告春子と矢野市議は、甲野市議の安否を心配し、警察や病院に電話する等して、甲野市議の所在を探ったが、同月二日の午前二時四〇分ころ矢野市議が東村山警察署から電話連絡を受けるまで、甲野市議の行方は分からなかった。

(二) 甲野市議は、同月一日の午後一〇時頃、西武池袋線東村山駅前の六階建てマンション「ロックケープハイム」の五階と六階の間の踊り場から地上に転落した。

その後、甲野市議は、救急車で防衛医大病院に運ばれたが、翌日の午前一時に同所において死亡した。死因は肋骨が折れて肺に刺さり、出血したためのショック死であった。

なお、甲野市議の遺書らしきものは発見されず、現場の遺留品の中から甲野市議が履いていたはずの靴は発見されなかった。

3  被告講談社の被告甲野らに対する取材(証人野田、証人久保山、乙一、二、九、一〇、一二、一三)

(一) 野田洋人(以下「野田記者」という。)及び久保山雅文(以下「久保山記者」という。)は、平成七年九月当時、週刊現代の取材記者であったところ、両者とも、平成七年九月一日、週刊現代編集部から甲野市議の死亡事件について現地における情報収集を指示された。

(二) 野田記者は、同月の五日から六日にかけて、草の根事務所において、甲野市議の死亡事件に関して甲野市議の娘である被告春子を取材した。

当時、草の根事務所は、テレビ、新聞、雑誌等の記者らが集まっていて、非常に混雑した状態であった。

野田記者は、被告春子に対して、草の根事務所の中で取材しただけでなく、被告春子が東村山駅近くのコンビニエンスストアに出かけたときに同行するなどして、取材を行った。

被告春子は、野田記者の取材に対して、概要以下のように述べた(以下の記述は乙一〇のデータ原稿の記載による。)。

「一日の午後一〇時半頃に、母の様子を見に行きました。家にはいませんでした。事務所も誰もいなくて、ワープロの電源がついたままでした。電灯やクーラーもつけっぱなしですし、おまけに母のバッグが、中身も全て置いてあるのを見つけて、正直に言うと、もう会えないのかな、まるで坂本事件のようだなと思いました。

自殺などではありません。これは断言できますよ。母のような人を自殺に追い込むことはできないと思います。支持者の方々も皆そう言ってますよ。それに、もし自殺するために、あのビルから飛び降りたのなら、もっと前に落ちていたはずです。あの位置は真下ですからね。

母は議員でいるときは、闘士と書かれる事が多いですが、議員でない時の母は、子供好きな、本当に優しい人でした。器用な人で、私が小さな頃、洋服は手作りでしたし、おやつも手作りでいつも作ってくれました。

私が小学生の頃から、母はボランティア活動を始めたのです。老人ホームへの訪問や、昼食会、子供会やPTAでも活動していたと思います。

弱い者いじめだけはやめなさい。そういう人達を守ってあげる勇気を持てるようになりなさいと、事あるごとに聞かされました。

母の場合も、私の場合も、特に政治の世界に入るつもりはなかったのですが、あくまでも市民活動のひとつとして、その必要性があったのです。

創価学会による政教一致を常に批判し続け、学会による被害者を支援してきた母の死を無駄にしないように生きていきます。

母が死んだという一報がきた時、私の家の前に不審車がいたので、外に出ました。妹の悲鳴で気がついたのです。すぐに、母は殺されたんだと思いました。当然ですよ。都議選の後ぐらいから、尾行されたり、いたずら電話や、ポケベルに4の文字が並んでいたり、放火の件や、矢野さんへの暴行、そして万引きの件もありました。特に万引きの事件後は、自分の身辺に気をつけ始めました。カバンの中に、何かを入れられたら、万引きしたというレッテルを貼られますからね。家の鍵や、夜中に一人で出歩かないようにするなど、警戒はしていたのです。

高知行きの話でも、既に航空券やホテルを偽名で予約するくらい警戒していたんですよ。これで自殺だって信じられますか。

創価学会は、オウムと同じですよ。手口としては、まず、汚名を着せてレッテルを貼る。そして、社会的評価を落とすのです。その後その対象となる人物が、精神的に追い込まれて自殺したふりをして殺すのです。今回で学会のやり方が良くわかりました。

警察にしても嘘っぱちですよ。事件に関しても、協力などまるでありません。現実、警察から家には、連絡が全くなかったのですよ、矢野さんには連絡をして、何故こちら遺族には連絡しないのでしょうか。今日(六日)になって初めて、東村山署の白石課長代理から連絡があって『母さんの当日の様子を聞きたいので署まで来てくれ』というのです。おかしいんじゃないですか。今ごろですよ。何故もっと早くに連絡をくれなかったのでしょうか。

二日の午前二時五〇分頃に、矢野さんの方に、母が亡くなったと連絡が来て、父、妹、弟と共に署に向かいました。署に到着して、母に会いたいと思っていたのですが、刑事課の刑事が、検死が終わるまで会わせてくれないのです。遺族なんだから会わせて下さいとお願いしても『ダメなんだから、ダメなんです』と受けつけてくれませんでした。

やっと会えたのが、検死後の午前五時頃ですよ。既に母は柩に入っていて、顔しか確認できませんでした。死に顔は般若顔、怒ってる顔でした。

その後の解剖に関しても、警察はさらさらやるつもりはなかったですよ。母と面会後、午前六時頃だと思うのですが、白石課長代理が『行政解剖をすることになりました』と言うのです。おかしいと思って、何故ですかと聞くと、『解剖に関しては検事が決めることになっている。司法解剖は事件性の高いものでないとできない。甲野さんの場合は行政解剖になった』というのです。加えて、病院も指定できないとね。彼らはこの事件に関して、事件性はなく、自殺であると決めている訳ですよ。

その後、それでは、こちらで任意で病理解剖をしますと話しました。こちらが何か言うたびに、白石課長代理は、上の階へ行って、誰かと話をしていたようですが、こちらがやると話した病理解剖に関しても、『金がかかりますよ』と気にいらなかったようです。何度か彼は席を外して、結果として『司法解剖となりました』と答えました。何故変わったのですかと、いくら聞いても『こちらでは申し上げられない』と何も答えませんでした。

本当に何から何までおかしいんですよ。身元の確認もさせないまま、ずっと待たされたし、救急車が来て、その後、三時間ほど生きていたにもかかわらず、何故私達を呼ばないのでしょうか。しかも防衛医大では、須田係長が母であることを確認しているんですよ。

生前、母は『私ぐらいの市民グループレベルの人間だとやりやすいわよね』と学会に殺されるかもしれないという事は言っていました。

当然、反学会キャンペーンをやっていて、高知のシンポジウムに出席しようとした前日にあのような事になったのですから、そこから推測される事実はひとつだと思います。」

野田記者は、右被告春子への取材を終えた後、取材内容をまとめた以上のような内容のデータ原稿を作成し、後日、右データ原稿を週刊現代編集部の藤田康雄編集部員(以下「藤田編集部員」という。)に提出した。

(三) 久保山記者は、同月五日午後四時ころ、甲野市議の夫である被告太郎の自宅を訪問した。

久保山記者は、被告太郎の自宅の玄関の呼出しを押して取材の申入れをしたところ、二〇歳前後の女性が現れたので、久保山記者は、その女性に対し、「週刊現代の記者ですが、今回のことでお話をお聞きしたくお伺いいたしました。」と述べた。

すると、その女性は、「私には分かりませんので、ちょっとお待ち下さい。」と言って家の中へ誰かを呼びに戻り、その直後、被告太郎が玄関から出てきた。

そこで、久保山記者は、被告太郎に向かって、「失礼ですが、ご遺族の方ですか。」と述べると、被告太郎は、「花子の夫の太郎です。」と述べた。

久保山記者は、被告太郎に対して、「週刊現代の記者の久保山と申します。こういう時に大変申し訳ありませんが、今回の花子さんの事件の件でお話をお聞きしたくてお伺いしました。」と述べ、週刊現代の記者の名刺を太郎に渡した。

被告太郎は、久保山記者が渡した名刺に目を向け、甲野市議の死亡事件に関して久保山記者の取材に応じ始めた。そこで、久保山記者は太郎に対して一五分程度の取材を行った。

被告太郎は、久保山記者の取材に対して、概要以下のように述べた(以下の記述は乙一二データ原稿の記載による。)。

「自殺なんかじゃありません。殺されたんですよ。警察から私達にそのことに対して何の聞き込みもありませんでした。しかも、当日妻は事件現場で鍵も靴も所持していなかったんですよ。おかしいじゃないですか。

学会だと思うけど、事件当日に妻が青白い顔で歩いているのを見たとか、私と離婚していたとか、事実でない噂が流れていると言います。

この事件は、創価学会と公明党と警察がつるんで、妻が万引き事件で、悩み込み、それが原因となって死んだ、というシナリを作ったのだと思いますよ。まるで、オウムがやっている一連の事件と同じことですよ。

私は、妻がいなくなって、妻が管理していた銀行のカードや通帳が、いまだにどこにおいてあるのかわかりません。

松戸市に私の勤務先があるんですよ。不動産関係の仕事です。

今、心労で体の調子が悪いのです。この辺で勘弁して下さい。」

久保山記者は、右取材後、その取材内容を以上のようにデータ原稿にまとめ、取材結果を藤田編集部員に報告した。

4  被告講談社週刊現代編集部による本件記事の作成(乙一三)

(一) 藤田編集部員は、平成七年九月六日、野田記者及び久保山記者から提出された前記データ原稿のほか、甲野市議の同僚市議、甲野市議の遺体を検案した医師、原告広報室、原告現役幹部、東村山市内のゴミ処理業者等に対する取材結果が記載されたデータ原稿をもとに本件記事のタイトル案を加藤晴之編集次長(以下「加藤次長」という。)に提出した。

被告講談社週刊現代編集部のトップである被告元木及び加藤次長は、藤田編集部員から提出されたこのタイトル案をもとに打ち合わせを行い、甲野市議の死亡原因についてその遣族が抱いていた感想を読者に忠実に伝えることを本件記事の編集方針として決定した。

(二) 藤田編集部員は、本件記事の右編集方針に従い、本件記事の構成を検討し、記事の最終稿を作成した。

被告元木及び加藤次長は、藤田編集部員から提出された右最終稿をチェックし、藤田編集部員に修正個所を指示した。

完成した原稿は同日中に印刷所へ入稿され、翌九月七日、ゲラをもとにして、藤田編集部員、加藤次長、被告元木の順で最終チェックをした後校了した。

二  争点1(被告講談社らの原告に対する名誉毀損の成否)について

1  一般に、雑誌における特定の記事中の記述が他人の名誉を毀損するものとして不法行為を構成するか否かは、当該記事全体の趣旨、目的等の諸般の事情を総合的に斟酌した上で、一般の読者の普通の注意と読み方を基準としてその記事の意味内容を解釈した場合、その記事が当該他人の社会的評価を低下させるものといえるかどうかによって判断すべきである(最高裁昭和二九年(オ)第六三四号同三一年七月二〇日第二小法廷判決・民集一〇巻八号一〇五九頁)。

また、雑誌の記事による名誉毀損の不法行為は、問題とされる表現が、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものであれば、これが事実を摘示するものであるか、またはある事実を基礎として意見ないし論評を表明するものであるかを問わず、成立し得るものである。

そして、ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、右意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、右行為は違法性を欠くものというべきである(最高裁昭和五五年(オ)第一一八八号同六二年四月二四日第二小法廷判決・民集四一巻三号四九〇頁、最高裁昭和六〇年(オ)第一二七四号平成元年一二月二一日第一小法廷判決・民集四三巻一二号二二五二頁)。

ところで、雑誌記事中の名誉毀損の成否が問題となっている部分について、当該部分が特定の具体的事実(以下「引用事実」という。)の存在を述べる第三者の伝聞内容を紹介、引用する形式を採用している場合にあっても、引用事実に対する修辞上の誇張ないし強調の有無・程度、引用事実部分の前後の文脈、記事の公表当時に一般の読者が有していた知識ないし経験、引用事実部分に対する筆者自身の論評の表現方法等を考慮し、当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すると、筆者自身が間接的ないしえん曲に引用事実の存在そのものを主張するものと理解されるならば、当該記事は、引用事実そのものについて事実を摘示したものと見るのが相当である(最高裁平成六年(オ)第九七八号同九年九月九日第三小法廷判決・民集五一巻八号三八〇四頁)。したがって、この場合、行為者は、引用した第三者の発言の存在はもとより、引用事実それ訂体がその重要な部分について真実であることまたは真実であると信じたことに相当性があることを証明しない限り、行為の違法性阻却ないし責任阻却を主張することはできないというべきである。

2  以上を前提に、本件問題部分の表現内容が原告の名誉を毀損したものといえるかどうかについて判断する。

(一)  前記認定事実によれば、本件記事は、東村山市議会の現職議員であった甲野市議の死亡原因について、自殺と断定するには不審な点があること及び甲野市議が生前原告に批判的な活動を続けていたこと等につき、甲野市議の遺族である被告甲野らへの取材等を基礎として、主に被告甲野らの原告に対するコメントを紹介、引用し、被告講談社らがその引用部分に論評を加えるという形式で構成された記事であるといえる。

そして、本件記事の右論評部分において、被告講談社らは、原告が甲野市議を殺したとの事実を断定はしておらず、したがって、一般読者においても原告が甲野市議を殺害したとの断定的、確定的な印象までは生じ得るものとはいえない。

(二)  しかしながら、①本件大見出し部分には、B五版三枚弱(一枚につき五段、一段三三行)の本件記事のうち、見開き頁上部二段分五一行相当という大きなスペースを割き、本文記事に使用されている活字の縦約一〇倍、横約七倍という大きな極太活字で『花子は創価学会に殺された』と記載されており、甲野市議は原告に殺害されたという被告春子の前記認定の発言内容をことさらに強調する表現方法を採用していること、②本件小見出し部分には、本件大見出し部分の直下に、二段抜きかつ本文記事に使用されている活字の約四倍角相当の太字ゴシック活字で「オウムのような犯行の手口」と記載し、前記認定の被告甲野らの発言の一部をことさらに強調して取り上げているばかりか、特定の宗教団体が自らに批判的な活動をしていた弁護士を暗殺した疑いを持たれているという本件記事の公表当時一般読者が有していた知識を引き合いに出して、原告による甲野市議殺害の疑惑の存在を読者に強く印象づけようとする意図が読みとれる表現方法がなされていること、③本件記事の本文の大半は、本件発言部分を含む被告甲野らのコメント及び甲野市議の死亡に自殺にしては不審な点があることや甲野市議が生前原告に批判的な活動を続けていた事実等右コメントを裏付ける関係者の発言等で占められており、甲野市議の死亡には何ら関係していないと主張する原告関係者の発言を記載した部分は本文中僅か九行に過ぎないこと、④前記認定のとおり、本件記事には、本件春子発言部分に関する被告講談社らの論評として、「しかし、甲野さんの活動は創価学会にとってはかなり脅威だったようだ。」との記載があり、また本件太郎発言部分に関する被告講談社らの論評として、「甲野さんの夫・太郎氏が『妻が自殺するはずがありません。この事件は創価学会と警察によってデッチあげられたとした思えない』と憤るのも無理はない。」との記載があるほか、甲野市議の死亡原因を自殺と断定した警察の初動捜査を批判する論評の記載がなされており(甲一)、これらの論評の内容は、全体として、甲野市議の死亡に原告が関与しているとする被告甲野らの主張に好意的な内容となっていること等に照らすと、本件問題部分の表現は、筆者である被告講談社ら自身が間接的に引用事実の存在そのものを主張していると一般読者に理解されても仕方がないというべきであり、その一般読者としては、本件記事の本件問題部分の記載から、甲野市議は原告に殺害されたのではないかとの疑惑を十分に抱き得るものといわざるを得ない。

すなわち、本件問題部分は、本誌の発行とともに、一般に公開されることにより、一般読者に対して甲野市議は原告によって殺害されたのではないかという印象を与え、もって、原告の社会的評価を相当程度低下させたというべきである。

3(一)  被告講談社らは、本件記事は、甲野市議の死亡を変死と疑う見解が存在している事実、すなわち甲野市議の娘と夫が、甲野市議の死亡に原告関与の疑惑を指摘した事実をそのまま伝えたものであるから不法行為を構成しないと主張する。

確かに、前記認定のとおり、本件各証拠によれば、被告甲野らが被告講談社の取材に応じて本件発言部分の趣旨の発言をしたことは認められる(その理由の詳細は後記のとおり)。

しかしながら、出版社が自ら取材した内容を記事にして公表する際に、取材された者の発言を引用する形で取材内容を記事にする場合でも、その表現方法等から見て、一般の読者にその出版社自身が間接的にその発言内容が真実であると主張するものと受け取られる可能性があるならば、その発言内容につき真実性ないし相当性が立証されない限り、公表された発言内容について名誉毀損行為としての不法行為責任を免れ得ないと解すべきことは前記のとおりである。

被告講談社らにおいては、本件記事内で引用する被告甲野らの発言内容の記載から読者が受ける印象について十分検討し、その発言内容が被告講談社らの主張であると読み取られるおそれがないよう本件記事の中立性確保に十分配慮して表現方法を工夫し、編集すべき注意義務があったにもかかわらず、被告甲野らの発言内容のうち、原告が甲野市議を殺害したかのような印象を特に強める発言部分をことさらに取り上げて、それを本件大見出し部分及び本件小見出し部分としたほか、前記2の(二)に記載したような不適切な表現方法をあえて採用しているのであって、このように編集された本件記事の表現方法、構成、配置等に照らせば、被告講談社らにおいて被告甲野らの発言をそのまま引用したに過ぎないこと(本件記事の中立性)を根拠に名誉毀損の不法行為責任を免れることはできないというべきである。

(二)  また、被告講談社らは、紛争、訴訟、抗争の報道に当たっては、当事者の言い分には相手方の社会的評価に触れる部分が必ず存在するものであるが、そのような部分をそのまま公衆に伝えたとしても、いわゆる紛争報道が民主主義社会において必要不可欠なものであることからすれば、そのような場合に報道機関は反対当事者に対する名誉毀損の責を負うものではないと主張し、本件記事は原告側と甲野市議の遺族である被告甲野ら側どちらかに偏ることのない公正中立的な紛争報道といえるものであり、また、原告を批判する活動を続けていた甲野市議の死因を巡る甲野市議の遣族と原告との紛争は公共的関心事であること等に照らせば、本件記事の掲載につき被告講談社らは名誉毀損の責を負うものではない旨主張する。

しかしながら、被告講談社らの主張する紛争報道が民主主義社会において重要なものと位置づけられる理由は、その紛争報道によって、民主主義社会を構成する個々の市民にその紛争について的確な判断を下すに足りる必要にして十分な情報が提供されるということにある。民主主義社会に存在する様々な紛争について、市民自らが的確な判断を下すためには、紛争当事者の双方について、正確かつ十分な情報が提供されることが不可欠の前提であるからである。したがって、特定の報道が紛争報道として民主主義社会において尊重されるためには、その報道が、紛争当事者の双方について、紛争の原因、当事者の主張及びその根拠等の情報を正確かつ公平に提供していることが必要というべきである。当事者の一方のみに偏った情報を流すだけの報道は、民主主義社会において尊重されるべき紛争報道の名に値しない。

したがって、当該紛争が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その報道の目的が専ら公益を図ることにあったと認められる場合、その報道に係る記事がその内容及び表現方法等を総合し一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断して、紛争当事者の双方の主張について、公正中立に正確かつ十分な情報を読者に提供するもの、すなわち紛争報道としての公正中立性を維持しているものと理解される場合には、報道された紛争当事者の主張の存在そのものについての真実性が立証されれば、当該報道機関が名誉毀損による不法行為責任を負うことはないと解するのが相当である。

これを本件についてみると、本件記事が紛争報道としての公正中立性を維持していないと判断されることは前記のとおりであるから、本件記事が公正中立的な紛争報道に当たることを前提とする被告講談社らの主張は、その余の点を判断するまでもなく理由がない。

そして、一般の読者から見て公正中立性を維持していないと判断される報道については、報道機関自身が間接的に紛争当事者の一方の主張する事実そのものを主張しているものと理解されるのであって、当該報道機関は、報道した紛争当事者の主張の存在についてはもとより、その主張内容それ自体がその重要な部分について真実であることまたは真実であると信じたことに相当性があることを証明しない限り、報道された紛争内容について名誉毀損行為としての不法行為責任を免れ得ないというべきところ、本件では本件発言部分における甲野らの主張内容それ自体についての真実性ないし相当性の立証がなされていないことは明らかである。

4  以上のとおりであるから、本件問題部分の記載は原告の名誉を毀損するものであり、したがって、被告元木は本誌の編集長として本件問題部分を含む本件記事を掲載した行為について民法七〇九条、七一〇条により名誉毀損の不法行為責任を負い、被告講談社は、被告元木の使用者として右不法行為について民法七一五条の使用者責任を負うというべきである。

三  争点2(被告甲野らの原告に対する名誉毀損の成否)について

1  被告甲野らは、被告講談社の単独取材を受けたことはなく、被告講談社の取材に対して、本件発言部分のような発言をしたことはない旨主張し、被告春子はこれに沿う供述(被告春子本人、丙四三)をする(なお、被告甲野らの右主張は本訴提起後一年以上経過した後の第七回口頭弁論において初めて主張されたものであるが、その後本件審理においては一年以上もの期間にわたり、右主張事実の有無を主な争点として、久保山証人尋問、野田証人尋問、被告春子本人尋問が実施された。)。

2  しかしながら、本件各証拠によれば、前記第三の一3(二)、(三)に認定したとおり、被告甲野らは、被告講談社の取材に応じ(以下「本件取材」という。)、それぞれ本件発言部分の趣旨の発言をしたことが認められるというべきである。その理由は以下のとおりである。

(一) 本件訴訟で証拠として提出された野田記者及び久保山記者のデータ原稿(乙一〇、一二)には、前記第三の一3(二)、(三)で認定したとおりの被告甲野らに対する取材内容が記載されていることが認められる。

ところで、一般に被告講談社で作成されているデータ原稿とは、取材の直後に取材記者自身が自身の主観を入れずに取材対象者が話した内容を忠実にそのまま客観的に記す形で作成する原稿であり、取材記者が自らの取材の結果を被告講談社の編集部門に報告するため、取材業務の過程で恒常的に作成するものであること、雑誌に掲載される記事の直接の元となる完成原稿以前の段階の資料であり、取材を受けた者の生の声を最も直接にそのまま反映している資料であることが認められる(乙一三)。このようなデータ原稿の役割及びその作成過程に照らせば、一般に取材の有無ないし取材を受けた者の発言内容等の検証においては、データ原稿の記載内容には相当の信頼が置けるものというべきであり、本件の野田記者らのデータ原稿においても、特に右の理は変わるものではない。

(二) 本件のデータ原稿の記載内容は、具体的でかつ甲野市議の遺族の発言としては自然なものである。特に、野田記者のデータ原稿(乙一〇)には、甲野市議の遺体の解剖方式をめぐる遺族側と警察側とのやりとりが、被告春子の言葉で臨場感豊かに語られているほか、被告春子がまだ幼かったころの母である甲野市議の思い出が具体的に語られており、それが取材に基づかない単なる作文であるとの疑念を抱かせるような事情は全く見当たらない。

また、その体裁においても、その記載内容を改竄したと思われるような形跡は見当たらない。

(三) 野田証人及び久保山証人の各証言内容も、その内容の具体性等から見て、被告甲野らに対する取材の経過及び内容に関する限り、その大筋において信用することができるというべきである。特に、被告太郎に対する取材時の状況について供述した久保山証人の証言内容は、丙二九の一ないし五により認められる同被告の自宅の状況と符合していること、同被告宅を訪問して同被告に取材を申し込んだときの状況についての証言内容も、具体的かつ臨場感にあふれており、作り話であるとの疑いを抱かせる事情は見当たらな。

なお、被告甲野らの代理人は、久保山証人が、平成一〇年六月八日に開かれた第一五回口頭弁論期日における法廷証言において、被告太郎を取材した日を平成七年九月五日から同月四日に変更したことを前提として、同証人が同月四日に被告太郎を取材することは客観的に不可能であることを根拠に、同証人の証言は虚偽であり、被告太郎が被告講談社から取材を受けた事実はないと主張する。しかし、久保山証人の前記取材日についての証言はもともと客観的な裏付けを示してなされたものではないし、日付についての人間の記憶は、特にその日付に結びついたエピソード等がない限り一般的に曖昧なものであることを考え併せると、久保山証人の右取材日についての証言内容に重きを置いてその証言全体の信用性を検討することは相当ではないというべきである。したがって、久保山証人が平成七年九月四日に被告太郎を取材したと証言したことを前提とする被告甲野らの代理人の主張は、その余の点を判断するまでもなく採用することはできない。

(四) 以上のとおり、野田証人及び久保山証人の各証言及び供述(乙一、二)は、被告甲野らに対する取材の経過及び内容に関する限り、その大筋において信用することができるというべきであり、これに対し、被告講談社から被告甲野らが取材を受けたことはない旨述べる右被告春子の証言及び供述(丙四三)は、右両名の証言及び供述の各内容並びに前記データ原稿の内容等に照らし、信用することはできない。

3(一)  そこで次に、被告甲野らが、被告講談社の取材に応じ、前記第三の一3(二)、(三)に認定したとおりの発言をしたことが、原告に対する名誉毀損としての不法行為を構成するか否かについて検討する。

(二) 雑誌出版社により公表された記事による名誉毀損が問題とされる場合、その情報提供者に対し不法行為責任を問うためには、当該情提供者に故意または過失を要するとともに、その情報提供行為と名誉を毀損したとされる当該記事との間に相当因果関係が認められることを要する。

そして、一般に雑誌記事の編集権はその出版社が独占的に有するものであるから、雑誌出版社の取材を受けた者がその取材に対応して何らかの発言をした場合でも、公的機関による公式の記者会見を通じた情報提供の場合を除けば、出版社による裏付け取材や独自の編集作業による情報の取捨選択等の過程を経て記事が作成されるのが通常であり、被取材者としても、その発言内容がそのままの形で雑誌に掲載されるとは予見していないのが通常である。したがって、仮に被取材者が、取材側の雑誌出版社に対して第三者の社会的評価を低下させるような発言をした事実があっても、その発言行為と、その発言を取材資料として編集された記事の公表によって生じた第三者の社会的評価の低下との間には、原則として相当因果関係が欠けると解するのが相当である。

もっとも、出版社の取材を受けた者が、取材における自らの発言をそのまま雑誌へ掲載することについて、あらかじめ出版社と意思を通じた上で、取材において第三者の社会的評価を低下させる内容の発言をしたというような特段の事情が認められる場合においては、被取材者の発言と当該記事の掲載によって生じた第三者の社会的評価の低下との間に相当因果関係を認めることができるというべきである。

(三) これを本件についてみるに、本件取材当時、被告甲野らは被告講談社の発行する週刊現代の記者の取材であることを認識しつつ、その取材に応じて本件発言部分の趣旨の発言をしていたことから(久保山証言、乙一、二)自らの発言内容の一部が右雑誌記事に掲載されるかもしれないことについて、被告甲野らがその認識を有していたことは推認できるものの、それ以上に、自らの発言をそのまま右雑誌記事に掲載することにつき、被告甲野らがあらかじめ被告講談社と意思を通じていた事実については、本件全証拠によってもこれを認めるに足りない。

(四) 特に、被告太郎においては、本件取材当時、甲野市議の死亡に関して日常的にマスコミの取材を受けていたというわけではなく、被告講談社からの指示を受けて同被告の自宅を訪問した久保山記者の取材申込みにたまたま短時間応じたに過ぎないことが認められる(久保山証言、乙一)。

したがって、右取材における自らの発言をそのまま雑誌へ掲載することについて、あらかじめ被告講談社と意思を通じた上で、右取材に応じたという特段の事情は到底認め難い。

(五) 他方、被告春子については、本件取材当時から、甲野市議の遺族として甲野市議の死亡に原告が関与しているのではないかとの強い疑いを有しており、甲野市議の死亡直後から甲野市議の議員活動の拠点であった事務所に詰めて他のマスコミからの取材に応じ、右疑惑の存在を繰り返し指摘していたことが認められる(甲八ないし一一、丙二二、二七)。

したがって、被告春子は、被告講談社の取材に対しても、自らの持つ右疑いが右雑誌記事へ掲載されることを意欲していたことが窺われるところである。

しかしながら、被告春子がいくら自らの発言内容の右雑誌記事への掲載を意欲したところで、右雑誌の編集権を発行者である被告講談社が独占している以上、被告講談社との間に意思の連絡が認められない限り、本件春子発言部分の趣旨の発言が記事として雑誌に掲載されるかどうか、掲載されるとして右発言のどの部分がどの程度のスペースで掲載されるのか、またどのような形で掲載されるのか(発言内容を引用する形で掲載するのか、発言内容を事実として掲載するのか)等を予見することは困難である。そして、被告春子と被告講談社との間に、本件春子発言部分の本誌への掲載公表について意思の連絡があった事実は、本件全証拠を総合してもこれを認めるに足りない。なお、野田証言及び乙二によれば、野田記者が、本件取材後の平成七年九月六日夜、被告春子の携帯電話に電話をかけ、本件取材内容の確認をした事実が認められる(乙二)が、これは野田記者の作成したデータ原稿(乙一〇)の正確性を確認したに過ぎず、本件春子発言部分の雑誌への掲載公表について被告春子の事前の了解を得たものではないと認められる。

現に、前記第三の一3(二)に認定のとおり、被告春子は被告講談社の取材に対してかなり数多くの発言をしており、それらの発言の中には原告の社会的評価とは関係のない部分も多く含まれているところ、前記第三の一4に認定のとおり、被告講談社は、被告甲野らのほか、甲野市議の遺体を検案した医師や原告広報部等に対する独自の取材をした上、甲野市議の死亡原因についてその遺族が抱いていた感想を読者に忠実に伝えることを本件記事の編集方針として独自に決定し、右のような数多くの被告春子の発言の中からその一部を抜粋して本件記事の本件春子発言部分に編集し、本件記事として掲載したことが認められるのである。

そうである以上、本件取材時における被告春子の発言と本件春子発言部分による原告の杜会的評価の低下との間に相当因果関係を認めることはできないといわざるを得ない。

4  以上のとおりであるから、被告甲野らが本件発言部分の趣旨の発言をした行為は、名誉毀損による不法行為を構成しないというべきである。

四  争点3(原告の損害等)について

1  弁論の全趣旨によれば、本誌の発行部数は約八三万部であったことが認められる。

また、甲二及び弁論の全趣旨によれば、本件大見出しは、日刊新聞紙の新聞広告や全国主要都市の電車や地下鉄の中吊り広告にも掲載されたことが認められるところ、右広告はいずれも本誌の販売促進のためになされたものであるのだから、右広告によって原告に生じた損害(社会的評価の低下)も本件記事掲載の不法行為と一応の因果関係があるものと解される。

これらの事情及び前記一で認定した諸事情、更に、後述するとおり本件においては謝罪広告の掲載が命ぜられるものであることをも総合考慮すれば、本件記事の掲載によって原告に生じた無形の財産的損害としては二〇〇万円を認めるのが相当である。

2  原告は、損害賠償の他、名誉回復のための措置として謝罪広告の掲載を求めている。

一般に、謝罪広告の掲載については、その性質上、その必要性が特に高い場合に限って命ずるのが相当ではあるが、以上に認定してきた本件事案の内容、原告の社会的評価の低下の程度等を総合考慮すると、原告が毀損された名誉は、右損害賠償のみでは未だ回復されていないものと認めるのが相当であり、したがって、本件ではその必要性が特に高い場合に当たるものということができる。

そこで、被告講談社らには謝罪広告の掲載を命ずるのが相当であるが、しかしながら、本件大見出しを掲載した週刊現代の新聞広告が日刊新聞紙上に掲載されるなどして週刊現代の読者以外の者に本件記事の内容の一部が知られたとしてもその影響は間接的なものに過ぎないこと及びその他本件諸事情に照らせば、原告が請求するように日刊全国紙五紙の朝刊全国版等の紙上にまで謝罪広告の掲載を命ずるのは過大な措置といわざるを得ない。本件記事が掲載された週刊現代の紙上にのみ謝罪広告の掲載を命ずれば足りる。

また、前記一、二認定のとおり、本件春子発言部分及び本件太郎発言部分の趣旨の発言が実際に被告春子及び被告太郎からなされたことは事実であって、本件記事はむしろそれらの発言をそのまま記事に掲載したこと、すなわち、本件記事の構成、配置、趣旨・目的等に不適切さないしその違法性が認められること、その他一切の本件諸事情に鑑みれば、原告が請求する別紙一記載のとおり謝罪広告の掲載まではその必要がなく、原告の名誉回復のための措置としては、被告講談社らに対して別紙四記載の限度で謝罪広告の掲載を命ずれば十分である。

3  以上のとおりであるから、被告講談社らに対して、別紙四記載の謝罪広告を被告講談社発行の週刊現代に別紙四記載の条件で一回掲載することを命ずるのが相当である。

五  以上の次第で、原告の本訴請求は主文一、二項の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官梶村太市 裁判官潮見直之 裁判官大寄久)

別紙一

謝罪広告

株式会社講談社及び「週刊現代」編集人兼発行人元木昌彦は、「週刊現代」平成七年九月二三日号において、「東村山市議『変死』の謎に迫る/夫と娘が激白!『花子は創価学会に殺された』」との大見出しの下、あたかも貴会が、東村山市議の甲野花子を殺害したかのような記事を掲載頒布しました。

しかしながら、甲野市議の死亡と貴会とは何らの関係もなく、右記事は事実に反しているものであります。

株式会社講談社及び元木昌彦は、右事実に反する記事によって、貴会の名誉を著しく毀損したことに対し、謹んで謝罪の意を表します。

平成 年 月 日

株式会社 講談社

代表取締役 野間佐和子

「週刊現代」編集人兼発行人

元木昌彦

創価学会殿

(掲載の条件―朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞、産経新聞、聖教新聞)

① 五段×一九センチ

② 見出し「謝罪広告」は、五倍明朝体活字

③ 本文は、二倍明朝体活字

④ 氏名・宛名は、三倍明朝体活字

(掲載の条件―週刊現代)

① 掲載面 本文活版

② スペース ヨコ 二分の一(天地×左高=一一〇ミリ×一五〇ミリ)

③ 活字の大きさ 見出し「謝罪広告」は、六二級明朝体活字

本文は、二〇級明朝体活字

氏名・宛名は、二四級明朝体活字

別紙二

謝罪広告

私たちは、株式会社講談社の発売した「週刊現代」平成七年九月二三日号において、「東村山市議『変死』の謎に迫る/夫と娘が激白!『花子は創価学会に殺された』」との記事中に、自己の発言が引用され、あたかも貴会が、東村山市議の甲野花子を殺害したかのような記事が掲載されることを企図して、同社の取材に対し、原告が甲野花子を殺害した旨の事実無根の発言を行いました。

しかしながら、甲野市議の死亡と貴会とは何らの関係もなく、右発言は事実に反しているものであります。

私たちは、右事実に反する発言によって、貴会の名誉を著しく毀損したことに対し、謹んで謝罪の意を表します。

平成 年 月 日

甲野太郎

甲野春子

創価学会殿

(掲載の条件―朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞、産経新聞、聖教新聞)

① 五段×一九センチ

② 見出し「謝罪広告」は、五倍明朝体活字

③ 本文は、二倍明朝体活字

④ 氏名・宛名は、三倍明朝体活字

(掲載の条件―週刊現代)

① 掲載面 本文活版

② スペース ヨコ 二分の一(天地×左高=一一〇ミリ×一五〇ミり)

③ 活字の大きさ 見出し「謝罪広告」は、六二級明朝体活字

本文は、二〇級明朝体活字

氏名・宛名は、二四級明朝体活字

別紙三・四<省略>

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